合同会社か株式会社か、、、続
Last updated on 2023年11月27日 By 杉田健吾
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前回のレクチャーでは、合同会社と株式会社の一番の違いについて、「所有と経営の分離があるかないかですよ」という話をしました。つまり誰が会社を所有しているかということです。株式会社は株を持っている人、つまり出資した人が会社を所有しています。そのため大事なことは経営者ではなく株主総会で決める必要があります。一方、合同会社は出資者が経営するのでしたね。
今回は所有者と経営者の分離があるかないかでどのような違いがあるのかをもうちょっと突っ込んで見てみましょう。そこで今回は株式会社と合同会社の違いについて所有者の関係の観点から解説していきます。
株式会社と合同会社では株式発行の有無が違う
株式会社と合同会社では「所有と経営の分離があるかないか」が違いますが、その理由は株式の発行があるかないかです。
株式会社は株を多く所有している人が会社を支配できる
株式会社ではその会社を所有しているのは株主でした。なので株式会社では、その会社の株式を誰がどれだけ持っているのか?によって、その会社を誰が支配しているのか?が決まります。まあ簡単にいうと、会社の株式を51%以上所有している人がその会社を実質的に支配しているということになります。なのでこの支配権を奪われると、つまり他人に株式の51%以上を所有されるとその会社はもう実質的にはあなたのものではなくなるということですね。
合同会社には株式が必要ない
これに比べて合同会社はどうなるのか?というと、合同会社の場合はお金を出した人(出資した人)が経営をするのでしたね。つまり、出資者=経営者なんです。なので株式の発行っていうものがないんです。お金を出した人が経営をやるんだから、株式なんて必要ないでしょ?って話です。
合同会社のように株式の発行がないとどうなる
そして、この株式の発行がないとどうなるか?というと、これがビックリなのですが、いくら出資していようが出資者同士は対等の関係なんです。???ってなるかもしれませんので、ここで例を挙げてみます。
出資金額に関係なく対等な関係
例えば合同会社Bという会社にあなたが99万円出資して、僕が1万円だけ出資していたとします。するとこの合同会社Bに対する二人の関係は対等なんですね。あなたが俺が99万円も出資してるんだから、経営のやり方については俺のいうこと聞け!と言っても通用しないんです。
たった1万円しか出資していない僕もあなたと対等の関係なので、ガンガン意見していいということになりますし、もっと言うなら利益の分配も2人で自由に決められることになります。これってなんとなく不公平じゃね?って思えますよね。なので合同会社を設立するのはひとり起業家か家族経営の会社が多いということなんですね。
複数人で合同会社を作るときは注意が必要
出資者は出資金額に限らず対等な関係になるので、もしあなたが他人と合同会社をつくるという場合は、あとあと揉め事になった場合はちょっと面倒なことになるかもしれないので、そこはちょっとだけ注意しておいてくださいね。また息子3人に出資させるような場合も、出資金額に差をつけても3人とも対等な関係になるので、ここにも注意が必要かもしれないですね。まあ、一人で会社を設立する場合ならどっちでも一緒ですがね。
合同会社を設立する際の注意事項
あと、これは最近の話ですが注意事項として書いておきますね。
合同会社の出資者は社会保険の加入が強制される
合同会社の業務執行社員(出資者)は、会社の経営に携わるのが前提なので、株式会社でいうところの非常勤役員という概念がありません。と、年金事務所から言われる可能性があるということです。これを言われると何が問題なのか?というと、合同会社で妻や子供に出資させて業務執行社員にして、その上で役員報酬を少しだけ出している場合です。その妻も子供も非常勤役員にはなれないため、社会保険への加入が強制されるということですね。
合同会社の出資者はあなたの扶養から外れる
つまり社長であるあなたの社会保険の扶養から妻も子供も外されるということです。これはちょっと困りますよね。僕はこの年金事務所の解釈は「ちょっとどうよ!」と思っているのですが、でも近年は年金事務所はこの辺りを強く指摘してきているようですのでくれぐれもご注意ください!
妻や子供を扶養のままにするには
そこで、これを回避するためには
- 合同会社を株式会社にしてしまうか
- 妻と子供を業務執行社員ではなく一般の従業員にしてしまうか
- 妻と子供を業務執行社員以外の社員にしてしまうか
ということになります。ご参考までにお伝えしておきます。
合同会社を設立するときの注意点を知っておこう
今回は株式会社と合同会社の違いについて所有者の関係の観点から解説してきました。株式会社では株式を多く持っている方が会社を支配できます。そのため、株式を51%以上持っていれば、実質的にその会社を自由にできます。一方合同会社には株式がありません。そして、出資者全員が対等の立場にあるため、出資金額の差で意見の重さが変わるわけではなく、利益の分配も出資金額とは関係なく自由に決められます。
合同会社は出資者全員の関係がよい間は問題がないかもしれませんが、後々意見が食い違ってきた時に問題が出る可能性があります。そのため、ひとり起業家や家族経営が多いんですね。
それ以外の注意点として、社会保険があります。株式会社では、非常勤役員が設置できるので、家族を非常勤役員にして役員報酬が少額であれば社会保険の加入義務はありません。しかし、合同会社の場合、出資者全員が経営者という考えから非常勤役員という概念がないといえます。そのため出資者になると社会保険への加入が強制される可能性が高いです。もし、妻や子供を扶養に入れたままにしたいのであれば、出資者にするのではなく他の方法を考えなければならないかもしれません。
このように、株式会社と合同会社では会社の所有者が違うだけではなく、所有者の関係も違います。そうは言ってもひとり起業家が法人を設立したら、合同会社でも株式会社でも結果は一緒ということです。