法人の退職金という特典って? 法人退職金はすごい!

Last updated on 2023年4月25日 By 杉田健吾

前回のレクチャーでは、個人事業主にはなんと退職金が認められないという話をしました。何十年も個人事業主として頑張ってきたとしても、退職金が経費にならないなんてひどい話ですよね。しかし、法人であれば退職金を経費にすることができるという話もしましたね。

そして今回のレクチャーでは、法人が出す退職金についているお得な特典について紹介します。

今回の内容は

前回のおさらい:個人事業主は退職金が経費にならない
個人事業主の退職金が経費にならない理由
法人であれば退職金を経費にできる

法人の退職金にはお得な特典がついている!
退職所得の計算方法とは?
退職所得控除ってなに?
実際に退職所得を計算してみよう!
退職所得に社会保険料ってかかるの?

まとめ

前回のおさらい:個人事業主は退職金が経費にならない

本題に入るまえに、前回のレクチャーのおさらいをしておきましょう。

個人事業主の退職金が経費にならない理由

個人事業主のあなたが何十年も事業を頑張って続けてきたとしても、残念なことに退職金は経費として認められないんです。なぜかというと、個人事業で払わされる所得税で認められる経費はかなり限定されているからです。個人事業主の経費のことを「必要経費」といい、必要経費はあくまでも「あなたの事業の売上を得るために必要な経費」であることが条件です。

だとすると、事業主であるあなたへの退職金って、売上を得るために必要な経費でしょうか…?「あなたが事業を辞める(あなたの退職)=個人事業の廃止」ですよね。個人事業の廃止ですから、そのために支払う退職金ってあなたの事業の売上を得るために必要な経費ではないですよね。だから経費として認められないんです。

ちなみに、さらに残念なことに、あなた(事業主)だけではなくて、あなたの奥さんや息子さんがあなたの事業の専従者となって働いていたとしても、奥さんや息子さんにも退職金は認められないんですよ。

法人であれば退職金を経費にできる

法人になると、誰に支給した退職金であろうが、経費にすることが可能です。すなわち、あなたが社長であろうが役員であろうが、お父さんが会長であろうが役員であろうが、奥さんが役員であろうが社員であろうが、息子さんが専務であろうが単なる社員であろうが退職金って認められるんですね。

なぜかというと、法人で経費にできるものは個人事業主のように限定されていないからです。個人事業主では認められないのに法人になった途端認められるのであれば、法人の方が得ですよね。

法人の退職金にはお得な特典がついている!

ここからが今回のレクチャーの本題です。なんと法人の退職金には、かなりお得な特典がついています。

法人の退職金って支払った側の法人では全額経費になるんですが、もらった側の社長、お父さん、奥さん、息子さんの方では、半分しかもらったことにならないんです。正確には半分よりももっと少なくなります。

退職所得の計算方法とは?

なぜもらった側が半分しかもらったことにならないかというと、退職所得を計算する段階で所得が2分の1になるからなんです。具体的には、次の算定式で退職所得を計算します。

退職所得の金額={収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)} × 1/2

退職所得控除ってなに?

算定式の中の「退職所得控除」とは、次の算定式で計算します。

勤続年数(=A)退職所得控除額
20年以下40万円×A(80万円に満たない場合は、80万円)
20年超800万円+70万円×(A-20年)

僕がこの章の冒頭で、退職金が半分よりもっと少ない額しかもらったことにならないといったのは、「退職所得控除」なるものが使えるからなんです。算定式を見てもらえればわかるように、勤続年数に応じて控除額が増えるしくみになっています。

実際に退職所得を計算してみよう!

例えば、法人から1億円の退職金を社長(勤続年数30年)であるあなたに支払ったとしましょう。

退職所得控除額:800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円

退職所得:{1億円-1,500万円}×1/2=4,250万円

社長であるあなたは1億円もらってるのに4,250万円しかもらったことにはならないんです。つまり1億円もらったとしても、6,000万円ほどは税金がかからないってことになります。

さらに奥さんや息子さんやお父さんも、同じ期間だけあなたの会社の役員をしていたとしましょう。この3人にも退職所得控除があるので、算定式にあてはめて計算すると、それぞれ奥さん1,500万円、息子さん1,500万円、お父さん1,500万円控除できるようになります。

とすると、この3人に1,500万円ずつ退職金を支払ったとしても、これまた支払った法人の方では4,500万円が経費になるので法人税はかからないにもかかわらず、もらった奥さんや息子さんやお父さんの方では、この4,500万円は退職所得控除の範囲内なので、もらったことにはなりませんよね。(税金がかからないということ)さらにもっと言うと、4,500万円を超える部分は半分しかもらったことにならないというすご〜い特典があるんですね。

つまりあなた、奥さん、息子さん、お父さんの4人合わせて1億円以上を無税の状態で、法人から個人に移転させることが可能になるということですね!だから大手の企業では、子会社を作って、その子会社には社長の親族が役員に名を連ねていたりするんですね。

退職所得に社会保険料ってかかるの?

僕のレクチャーを読んで節税脳に磨きがかかってる人が気になること…社会保険料ではないでしょうか?なんと退職所得には社会保険料はかからないんです!1億円も退職金をもらっていながら、社会保険料がかからずに受け取れる…すごくないですか?

この話を聞いちゃったら、やっぱ早く法人にして、みんな役員にしておくか!ってなりますよね。

まとめ

今回のレクチャーでは、退職金のお得な特典を紹介しました。今回のポイントは次の3つです。

・退職金には「退職所得控除」という控除が使える

・退職所得控除をひいたあとの金額を1/2にすることができる

・家族役員にもお得な特典は適用可能!

個人事業主のあなたにはぜひ法人の社長になって、将来受け取れるお金をぜひ増やしてほしいです。そしてさらに退職金のお得な特典、実はこれだけじゃないんです。お得な特典②は次回のレクチャーで紹介しますので、お楽しみに!