フェラーリ節税ってほんとなの?
Last updated on 2023年8月29日 By 杉田健吾
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「フェラーリを会社で買って節税しよう!」
ときどき一部の起業家の中で聞く話ですよね。フェラーリを買うと本当に節税になるのでしょうか?今回のレクチャーでは、フェラーリが節税効果を発揮するのかどうか、について検証します。
フェラーリを買ったとしても節税にはならない!?
フェラーリを買ったら節税になるかどうかについては、結論から言うと、正確には節税にはなりません。でも、巷ではまことしやかに「不動産を売却して多額の利益が出たら、フェラーリで節税しようぜ!」と噂されていますよね。
フェラーリで節税ってどういうこと?
フェラーリの購入が節税にならない理由を説明する前に、なぜ「フェラーリを購入すると節税になる」と言われているかについて説明しましょう。
会社で土地や建物などを売却した事業年度には、たまたま大きな利益(所得)が出てしまうことがありますよね。大きな利益(所得)がでるということはすなわち大きな税金が発生するということです。でも、そのまま何もしないと税金でがっぽり持っていかれるとなったら、この税金をなんとかしたいと考えるのはみんな同じですよね。
そんな時に登場する手法の一つが、フェラーリなどの高級車、つまり4年落ちの中古車を使って節税するという方法です。
フェラーリを買うと節税になると言われている理由とは?
「フェラーリを買うと節税になる」と言われている理由を紹介します。
例えば、4年落ちの中古車であるフェラーリを会社のお金で事業年度の期首に2,000万円で買ったとしましょう。実は、事業年度の期首より事業に使っていれば、その購入金額全額の2,000万円が一度に経費にできます。
もし不動産を売却した利益(所得)が2,000万円あっても、2,000万円のフェラーリを買うことで、2,000万円の減価償却費が全額経費になるので、結果「利益ー経費=0」となって税金がかからなくなるんです。つまり、フェラーリによって利益を消してしまうということです。
減価償却を活用した節税方法の本当の意味とは?
これまでの説明を聞くと、「なるほど〜これは節税効果がありそう!」とそう思いますよね。しかし、実は落とし穴なんです。減価償却費を活用した節税方法の本当の意味を知らないとのちのち損をすることになります。
フェラーリの購入は税金の先送りにすぎない
会社で2,000万円の利益(所得)が出ていると、そのまま何もしなければ600万円以上の税金を支払わなければいけません。だから、フェラーリを買ってこの利益を消してしまおうという気持ちは分かります。
しかし、600万円の税金はフェラーリを買ったことにより消えたわけではなく、「今はまだ」600万円を支払わないという選択をしているにすぎません。
確かに税金600万円は今期は払わなくてもよくなりましたが、お金2,000万円は出て行ってしまいました。そうなると「オタクの会社、資金繰り大丈夫?」という話になります。
「ローンで買ったのでお金は出て行っていないですよ」と思われた方もいるかもしれませんが、借りたお金はいつかは返さないといけませんね。しかも利息つきで。トータルであなたが支払う金額はキャッシュで買ったときよりも多いはずです。ただ、問題はキャッシュで買ったかローンで買ったかということではありません。
フェラーリを売却したときに税金がかかる
もし次の事業年度に会社にお金が必要になって、このフェラーリを売却して換金したらどうなるか、について考えてみましょう。
翌年にほぼ同額の2,000万円で売却できたとします。フェラーリは値落ちしにくいからですからね。フェラーリの売却で得たお金が全額利益になるので、翌年に結局2,000万円の利益が計上されて、税金600万円を払わされることになります。
つまり、どこまで行っても何か資産を買って節税という話は、あくまでも税金の先送り、税金の繰り延べであって、完全な節税ではないということですね。税金を払う時期をコントロールできるという意味では節税と考えてもいいと思います。
ただ重要なのは、節税ではなく税金の繰り延べということを分かってやっているのか、分からずに目先のことだけを考えて目の前の税金を減らすためだけにやった行為なのか、ということです。分かっているのといないのとでは、その後の効果はかなり変わってくるでしょうね。
しかも翌年にフェラーリの売却価格が下落してしまったら、節税どころか大きな損失になってしまって、お金を取り返せないリスクもあるということを十分理解しておくことも大切です。
売却するのであればタイミングを考える
フェラーリを買う節税方法を使いたいのであれば、フェラーリの売却するタイミングをしっかり見極めることです。
多くの経費を計上することが決まっている事業年度に売却すればいいんです。例えば、役員であるお母さんが退職をされる(=退職金を支払う)タイミングで売却をするとか…。
つまり、フェラーリを買うのが利益を消すためであれば、フェラーリを売るのは損失を消すためにするんです。フェラーリの売却益がなくなれば、税金は支払う必要はありませんよね。
フェラーリの購入は節税といえるかは疑問だが、税金のコントロールには一役買う
今回のレクチャーでは、「フェラーリ節税って本当なの?」という話をしました。今回のポイントは次の3つです。
・フェラーリを買ったからといって、税金がなくなるわけではない
・フェラーリの購入によって、税金を払うタイミングを後にずらすことは可能
・フェラーリを買うときはいつ売却するかの出口戦略を考えることが最も大切
フェラーリ節税の結論としては、税金を払うタイミングをある程度コントロールできるという意味では節税と言えますが、その税金はいつかどこかで払うことになるという意味では、これが節税と言えるかは疑問ということですね。やはり節税は将来のことまで考えてデザインすることが大事です。フェラーリ節税だけに限らず、すべての節税は出口戦略をしっかり考えてから行うべきですね。
ちなみに…。
そもそも会社で買ったフェラーリが会社の事業に必要かどうかについては、きちんと証明できないとそもそも経費にならない可能性もあるので、気をつけてくださいね。ここらへんの話はこちらのレクチャーでしているので、ぜひ読んでみてください。