社長に給料を出すと節税になる?個人事業主から社長になるだけで驚くほど所得税額が違う!
Last updated on 2023年2月6日 By 杉田健吾
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僕はこのブログで「節税がしたいのであればまず旅費規程を作ろう」という話をたくさんしています。今日は、旅費規程に代わる「お金の出ていかない節税」の中で意外と重要視されていないものにスポットを当ててみたいと思います。それは、ズバリ役員報酬です。
「えっ?役員報酬ってあの役員報酬?それって給料のことですよね?給料がなんで節税になるの?」って思った方、今回の記事、必見です。
今回の記事では、元国税で現在はひとり起業家(ひとり社長)専門のお金と税のコンサルタントである僕が「役員報酬を使ったおもしろい節税方法」について紹介します。賢く節税したい方はぜひ最後まで読んでみてください。
給与所得控除を使うとかなり税金が安くなる
前回の記事で少しお話ししましたが、実はね、給料には初めから経費をいくらか認めてあげるよというお得な配慮がされている、ということでしたよね。覚えていますか?
前回のおさらい
えっ?覚えてないって…?覚えていないという方のために、軽く前回の記事のおさらいをしておきましょう。
個人事業主であれば、「収入ー経費=所得(利益)」で、所得(利益)を算出し、この所得(利益)に税率をかけて税金を計算しますね。
でも、会社で働いて給料をもらっている人の場合は、会社からもらった給料から何か経費的な支出をしたとしても、つまり給料の手取りの中から何か経費のような支払いをしたとしても、それを経費として差し引いて、税金を計算するなんてことはしてくれませんよね。
でもそれではかわいそうだから、サラリーマンのように会社から給料をもらう人には、概算の経費として「給与所得控除」という名前で、いくらか経費を引いて税金を計算するという仕組みになっているんですよ、という話でしたよね。
給与所得控除で年収850万円の人のお給料は655万になる!
例えば、あなたのお給料が年間850万円だとしたら、195万円を経費として認めてあげましょうとなっているんですね。なので850万円の給料をもらっている人は、「850万円ー195万円=655万円」で算出された655万円が、給料に対する所得(利益)と見なされて、655万円に対して税率をかけて税金を計算するということになります。(厳密には扶養控除等をさらに引きますが…。)
給与所得控除は個人事業主は使えない
「えっ?ということは個人事業主の私ならどうなるの?『収入ー経費=所得(利益)』だから、例えば収入が1,200万円で経費が350万円だったら、『1,200万円-350万円=850万円』で所得(利益)が850万円だから、この850万円を給料として事業主本人がもらってしまえばさらに850万円から195万円の経費を認めてくれるってこと?」と思われましたよね?
いやいや、これは残念ですが、個人事業主本人に給料は出せないということでしたよね。
「えええ〜そんなあ〜それってひどくない?じゃあ結局さあ〜給料で節税なんてできないじゃん」って思いますよね。
給与所得控除を使いたいのであれば、法人化しよう!
ここでね、法人が登場するのですね(笑)給与所得控除を使いたいのであれば、個人事業主は法人化をしましょう!
法人の社長になれば、給与所得控除が使える
法人(会社)になるとこの事業主本人と同じ立場の人って誰でした?そう、社長でしたよね。この社長には、給料である役員報酬というものが出せるということなんですね。
給与所得控除を使うと、どれくらい税金が違う?
個人事業の所得(利益)と社長の給料で、税金の額を比べてみましょう。
個人事業で所得(利益)が850万円だったとします。ここから事業主本人には給料が出せないので、850万円に対する税金等は220万円程度になってしまいます。
法人になってこの所得(利益)850万円を、役員報酬として社長本人がもらってしまうとしましょう。この850万円から195万円が自動的に引かれて、655万円に対して税金がかかる。つまり、税金等は150万円程度になってしまう……ということなんですね。
おおお!いきなり70万円も税金が減った……。なんか手品でもしたの?って……(笑)
分散の術を使えば、さらに税金を安くすることもできる!
そして法人であれば、もっと税金を安くすることもできちゃうんです。
所得税は累進課税なので、所得が高くなれば高くなるほど税率が高くなります。なので、850万円を社長一人でもらってしまうと税率が高くなってしまうんです。そこで、ある技を使って、この役員報酬を親族で分散するという方法があります。僕はこの方法を「分散の術」と呼んでいます(笑)
例えば給料を、次のようにすると税金はどうなるか?
・社長 400万円
・奥さん 300万円
・子ども 150万円
これね……、あら不思議。
・社長 36万円
・奥さん 23万円
・子ども 8万円
合計67万円になってしまう…。あれ?なんと?また手品???社長一人で850万円もらうと税金は150万円だったのに、3人に分散すると67万円って…。えええ?分散するだけでまた83万円も税金が少なくなるの?まじか?そんなのあり〜?ですよね。
つまり、個人事業主本人には給料は認められないので、最初は税金は220万円でした。しかし、それを法人にして社長が一人で給料としてもらうと150万円になりました。さらに、この給料を分散の術を使って親族3人で分散すると、驚くことに67万円になってしまった…。その差なんと153万円!!!
この状況、なんかわけわからないですよね(笑)収入と経費の状況は何も変わらないにも関わらず「役員報酬を賢く活用するだけ」で、税金の金額が簡単に変わってしまう…。ちょっと驚きで不思議ですよね。でも実際にはこんなもんなんです。
まとめ
今回の記事では「役員報酬を賢く活用することで税金を少なくする方法」と「その税金の額の違い」を紹介しました。今回の記事のポイントは、こちらの3つです。
・給与所得控除を活用したいなら、法人にすべし
・役員報酬を賢く活用すれば、税金が安くなる
・分散の術を使って親族3人で給料を分散すると、さらに税金が安くなる
今回はかなり計算を簡略化して社会保険や専従者給与は考慮していないので、最終的には何が一番お得かは個別事情を考慮しないとわかりませんが、税金ってどう計算するかでこんなことになるんだ、ということを分かっていただきたかったので今回は強引に計算してみました。
皆さんも税金のことそろそろ目を向けていただいて、いろいろと考えてみるもの面白いと思いますよ!僕のブログではこんな感じで、ひとり起業家のタメになる税金の話をしています。気になる方はぜひ別の記事も読んでみてくださいね。