税務署より厳しい税理士さんがいる理由とは?

Last updated on 2023年9月11日 By 杉田健吾

税理士さんの中には税務署より厳しい税理士さんがいるって知っていましたか?実は「税務調査で否認されるから」とあらゆる経費を「あれダメ、これダメ」としている税理士さんが多いんです。このレクチャーでは「どうして税務署より厳しい税理士さんがいるのか」ということをお話します。

今回の内容は

型にはまらない経費は認めない税理士さんの存在
人脈づくりのために使ったお金は経費にならない?
ひとり起業家のことをなにも分かっていない

税務署より厳しい税理士さんが多い理由

理由:税務調査対策のため
なんで税務調査対策のためにそこまでやるの?
そもそも税理士の立場って?

税務調査対策が抜群の税理士さんよりあなたの仕事を分かってくれる税理士さんを探そう

型にはまらない経費は認めない税理士さんの存在

先日、知り合いのひとり起業家の方からこんな話を聞きました。

人脈づくりのために使ったお金は経費にならない?

「いろんな業界や団体の交流会や懇親会に参加して、人脈を広げようとしていたのですが、顧問税理士にこれらの参加費用は経費にならないと言われました。本当にそうなんでしょうか」という相談でした。

この方の仕事は、ホームページの製作と起業支援コンサルなのですが、会社の商品を直接営業しに行っているわけではなく、単なる人脈作りのための交流会とか懇親会だから仕事に関係ないという理由だそうです。

ひとり起業家のことをなにも分かっていない

さすがに僕も「どこまで厳しいねん」とびっくりしてしまいました。そもそもこの解釈は間違っています。

ひとり起業家にとって、いろんな業界の交流会や懇親会に顔を出して人脈を作ることは立派なマーケティングの一つですよね。そもそも知り合いを作らないことには、仕事の依頼なんか来ません。だからそのために自分の貴重な時間を使って、せっせと人脈づくりのため、知り合いを増やすため、つまり見込み客と繋がるためにお金と時間と労力を使っているのにもかかわらず、そのための活動にかかる費用が経費にならないだと…。

税理士さんには節税に関するアドバイスをしてほしいのに、なんだか残念ですよね。しかしながら、こういった話は実はあちこちで耳にします。

税務署より厳しい税理士さんが多い理由

なぜこんな考えの税理士さんが意外と多いと思いますか?理由は2つあるのですが、少し長くなってしまうので今回のレクチャーでは1つ目だけ紹介します。

理由:税務調査対策のため

その税理士さんが非の打ち所のない真っ白な申告書を作ることに命をかけているからです。

税務調査があってもまったく問題点がない状態を作るために、疑わしきは排除する、グレーは認めない、真っ白のものしか経費は認めないということに徹しているからではないでしょうか。

でもなんでそこまでして問題のない申告書を作る必要があるのかというと、問題のない申告書を作れば作るほど、税理士さんや税理士事務所が税務署に対して幅が効くようになるためなんですね。税務調査対策のために、税務署出身のOB税理士をわざわざ非常勤で雇っている税理士事務所もあるくらいです。

なんで税務調査対策のためにそこまでやるの?

「あそこの税理士事務所は厳しいから調査に行っても問題はほぼない」という評判がたてば、申告書にその税理士さんのハンコが押してあるだけで、調査に来る確率がガクンと減ります。税務署も調査に行ったのに追徴できる税金がない会社には行かないですからね。

「税務調査で問題が出ない税理士事務所!!!」と言われたら、なんとなくお願いしようかな?という気持ちになってしまいますよね。税理士さんからしたらすごい宣伝文句になります。これはこれで税理士事務所のブランディング戦略としてはありだと思うし、実際にそれで調査に来る確率が下がるのであれば、そういうやり方も悪いとは言いません。

社長がそれを望んでいるのであれば、全然ありです。ただそういう税理士さんは、正直言って税務署より厳しいので、経費の範囲が下手したらみなさんが思っているものの半分ぐらいになってしまうかもしれません。なので、この考え方に合わない社長さんはもしかしたら避けた方がいいかもしれませんね。

そもそも税理士の立場って?

税理士さんは納税者(あなた)と税務署のどちらの味方なのか?この議題はときどき耳にすることがあります。税理士さんは「独立した公正な立場」いわゆる中立な立場であることを求められているポジションです。なので、納税者の味方でも税務署の味方でもどちらでもない、というのが正解です。

とはいえ、税理士さんのお客さんは納税者ですから、納税者の不利益になることはしてはいけません。税法に従わないといけない以上、いついかなるときも納税者の利益を追求するわけにはいきませんが、「脱税」ではなく「節税」の立場でお客さんのために、アドバイスをしたり、経費の判定をしたりするべきですよね。

税務調査対策が抜群の税理士さんよりあなたの仕事を分かってくれる税理士さんを探そう

今回のレクチャーでは、どうして税務署より厳しい税理士さんがいるのかということを紹介しました。今回のポイントは次の3つです。

・お客さんの利益より非の打ち所がない申告書を作ることに命をかけている税理士さんがいる

・税務調査に強い税理士さんが必ずしもあなたにとっていい税理士さんとは限らない

・税理士さんを探すときは、ひとり起業家の仕事や立場を理解してくれている税理士さんにしよう

税理士さんはたくさんいますので、きっとあなたの考えとマッチした税理士さんが見つかるはずです。もし新しく税理士さんを探そうと思ってる方がいれば、ぜひ参考にしてみてくださいね。