ベンツは中古で4年落ちでもダメって?

Last updated on 2023年7月24日 By 杉田健吾

前回のレクチャーでは、車を法人で購入するときの注意点を紹介しました。車で節税したいのであれば、4年落ちの中古車がおすすめという話をしましたので、中にはさっそく購入を検討していらっしゃる方もいるのではないでしょうか?

そこで今回のレクチャーではさらに踏み込んで「購入するタイミング」についてお話します。購入するタイミングを誤ると経費にできなくなってしまいますので、ぜひこのレクチャーを読んで十分に注意してくださいね。

今回の内容は

前回のおさらい:車を購入するときの注意点
注意点①:一気に経費にできるわけではない
注意点②:新車よりも中古車がおすすめ
いただいた質問:4年落ちってどういう意味?

車を購入するベストなタイミングっていつ?
1ヵ月分しか経費にできないってマジ!?
事業の用に供している期間分しか経費にできない
車を買うときは計画的に!

まとめ

前回のおさらい:車を購入するときの注意点

本題に入る前に前回のレクチャーのおさらいをしておきましょう。

注意点①:一気に経費にできるわけではない

車を購入した場合は、購入時に全額が経費にできるわけではありません。国税庁の定めた耐用年数に応じて、何年かにわたって経費になります。例えば、2,000万円する新車のベンツを購入した場合、1年目に経費にできる金額は600万円が限界です。

「今期は利益が2,000万超えるだろうから2,000万円のベンツを買ってその利益を消そう…」とはできないので、絶対に覚えておいてくださいね。

注意点②:新車よりも中古車がおすすめ

「どうしても新車が欲しいんだ」と強いこだわりのある人以外は、節税の観点からみれば新車よりも中古車を購入する方がおすすめです。なぜなら、新車よりも中古車の方が耐用年数が短いため、1年に経費にできる金額が大きいからです。

例えば、4年落ちのベンツを1,500万円で買ったとしたら、うまくいけば1年目に全額が経費にできます。細かい計算の仕方はいちいち書きませんが、要は4年落ちの中古車であれば買ったその事業年度に全額経費にできる…(かも)という話ですね。

いただいた質問:4年落ちってどういう意味?

前回のレクチャーを読んでくださった読者さんよりこんな質問をいただきましたので、こちらで回答させていただきますね。

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4年落ちの中古だと経費で一括とありましたが、4年というのは年数に決まりがあるのでしょうか?

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ここでいう「4年落ち」というのは、その車が日本国内で初めて登録された年度から何年経っているかを指します。例えば、2018年に新車登録された車は2023年現在では「5年落ち」と言うことになります

レクチャーでは分かりやすくするために「4年落ちの中古車と」いう表現を使っていますが、正確には新車登録から4年以上経過した車を事業年度の最初に買えばその買った事業年度で一括で経費にできます。

車を購入するベストなタイミングっていつ?

ここからが本題です。先ほど「できる(かも)」と書いてるのはなぜだか分かりますか?もう知っていると思いますが、利益が出てから慌ててベンツを買っても間に合いません。注意すべき「購入のタイミング」があります。

1ヵ月分しか経費にできないってマジ!?

4年落ちの中古のベンツを1,500万円で3月決算法人(事業年度が4月〜翌年3月の1年間)が購入したとしましょう。

「今期はたくさん利益が出たから車を買って節税しよう!そうだ、4年落ちの中古車であれば、1年間に全額経費にすることができるって杉田さん言ってたな。よ~し、節税するぞ!」と言って、決算期末の3月に慌ててベンツを買おうとしているそこのあなた…ちょっと待ってください。

実は、決算期末の3月に慌てて駆け込んで買っても、たったの125万円しか経費にできませんよ。(1,500万円×1/12ヶ月=125万円)

計算式を見たら分かるように1ヵ月分しか経費にできません。つまり「その中古のベンツ君今期は3月の1ヶ月しかまだ使ってないから、経費も1ヶ月分だけ認めてあげるね」と言われてしまいます。せっかく節税できると思って、有り金はたいて1,500万円のベンツを買ったのに、それでは踏んだり蹴ったりですね。

事業の用に供している期間分しか経費にできない

車、機械装置や家(会計用語で減価償却資産といいます)などの大きなお金がかかる物は、その物を使った期間に応じて経費にするという決まりがあるからなんですね。

しかも、この使った期間というのが曲者なので注意が必要なんです。業界用語で「事業の用に供しているか?」と言うのですが、中古のベンツを買っただけではダメで、そのベンツが本来の目的のために使用を開始されていなければ、たとえ納車がされていてもまだ経費にはさせません。「買っただけでちゃんと仕事の目的で使ってないでしょ?」と言われるんです。

なので、先ほど例にあげた3月決算の会社が3月に慌てて、1,500万円支払って中古の4年落ちのベンツを買ったけれど、「納車が4月1日だった」や「納車はしてたけど倉庫の中で保管していただけでまだ使える状態になっていなかった」というような場合は、1ヶ月分の125万円も経費に認められません。

車を買うときは計画的に!

もうお分かりだとは思いますが、いくら中古で4年落ちの1,500万円のベンツでも、その事業年度の最初に買って本来の目的に使っていないと、1,500万円は全額経費にはできないということです。なので、中古の高級車で節税しようと思ったら、やはり早め早めに計画的に利益予想を立てて、今期は利益が間違いなくこれぐらいになりそうだからという計画のもと、「じゃあちょうどベンツの買い替えどきだから、中古で4年落ちで資産価値が高く値段が下がりにくい車種を探してみますか?」とするべきですね。

やはり節税対策は利益が出てから取り組んでは遅いんですね。決算のギリギリになってなんとかなりませんかと言われても、なんともなりません。できることなら早め早めの対応にぜひ、取り組んでくださいね。

まとめ

今回のレクチャーでは「車を購入するベストなタイミング」についてお話しました。今回のポイントは次の3つです。

・決算期末ギリギリになって車を購入しても経費にできる金額はたったの1/12

・車や家などの減価償却資産は使った期間しか経費にできない

・節税対策のために車を買うときは計画的に利益を計算してはやめの行動をしよう!

車の購入時だけに限らず、節税対策は早め早めに取り組みましょうね。