部屋の壁紙貼り替えたいけど?
Last updated on 2023年4月4日 By 杉田健吾
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以前のレクチャーで「仕事場の壁紙を張り替えて修繕費にしました」という話をしたら、「えっ?仕事場の壁の貼り替えは修繕費になるのですか?固定資産に計上しなくてもいいんですか?」という質問をいただきました。なかなか的を射た、いい質問ですね。
修繕費なら今期に全額経費に計上できるけど、固定資産になってしまうと減価償却で毎年少しずつ経費にしなければいけないですからね。こんな質問をいただくということは、節税脳が鍛えられてきていますね。
そこで今回は、部屋の壁紙張り替えたいけどどうすれば修繕費にできるのかについて紹介していきます。
資本的支出か修繕費か
今回の話はちょっとレベルの高い話で、税務的には「資本的支出」か「修繕費」かという話になります。資本的支出?なんじゃそりゃ?となる方も多いと思いますが簡単に説明します。
会社の所有物の修理が前提のお話
資本的支出と修繕費のどちらで仕訳したら良いか悩むことはよくあって、税務調査ではよく問題になるところなんですよね。僕からすればどっちでもええやんって思いますが税務調査では一応、厳しく見られます。なのでちょっと難しい内容ですが解説しておきます。解説する前に、勘違いされるといけないので今回の前提をお話ししますが、今回は「自宅の仕事部屋ではなくて、会社のオフィスの壁を修繕する」というのが前提です。
資本的支出とは価値が上がる修理
それでは、資本的支出って何?という話をしていきましょう。例えば、オフィスの壁を修理した場合を考えてください。この場合の資本的支出とは何かというと、修理した壁についてその壁の価値が上がるような修理(修繕)をした場合の支出ということになります。価値が上がるってどゆこと?ってなると思いますが、簡単に言うと「良い壁」に変えた場合ってことです。
例えば、今までの壁は防音ではなかったけど、修理する際に防音の壁にした場合です。また、断熱仕様では無かった壁を断熱仕様の壁にした場合も価値が上がっていますね。このような場合、今までに無かった機能や耐久性が新たに加わったので、「この壁を修理することで壁の価値が上がりましたよね?」って言われるのです。このように価値が上がる修理(修繕)の支出を資本的支出といいます。
資本的支出か修繕費かが重要な理由
たしかに防音とか断熱とかになれば価値は上がったと言えそうだけど、だから何?って話ですよね。では、この壁を修理したことで価値が上がりましたよねって言われるとどうなるかわかりますか?
価値が上がる高額な修理は減価償却が必要
答えは、この修理費用が20万円以上すると一括で経費にはできないということです。つまり、減価償却という面倒くさい方法で、ちょっとずつ何年にも分けて経費にしていかなければならなくなるということです。そのため、減価償却にしたくないのであれば、どのように修理するかを注意して修理しないといけません。
価値が上がらない修理は一括で経費にすること可能
しかし、修理には先ほどのように防音の壁に変えたというように、明らかに壁の価値が上がる修理だけではないですよね。つまり価値が上がったのか微妙な修理の場合です。たとえば僕の部屋のように壁紙を変えただけのような場合は、価値が上がったとは言えないでしょう。このような価値が上がらない修理の場合は20万円以上かかったとしても、修繕費として一括で経費にできることになります。
簡単に言うと、壊れたものや傷んだものを元の状態に戻すような修理は、修繕費で一括経費にできます。例えば、以下のようなものです。
- 部屋の雨漏りを直す
- 壁に開いた穴を塞ぐ
- 破れた壁紙を張り替える
- ひび割れた窓ガラスを取り替える
- ぶつかってヘコんだ車のドアを直す
このような修理については、金額が20万円以上であっても、たとえ100万円かかったとしても一括で経費にできるってことなんです。だって、その修理をすることで別に価値は上がっていないですからね。あくまでも原状回復をしただけですよって言えるからです。
修繕費なら高額でも一括で経費にできるが。。。
このように原状回復なら高額でも一括で経費にすることが可能です。しかし税務調査で問題にならないために以下のことに気を付けると良いでしょう。
高額な修理を一括で経費にすると怪しまれる
一括で経費にするときに注意して欲しいのは、修理に100万円もかかると「これ本当に原状回復だけ?まったく価値が上がっていないの?ほんとに?その修理をすることで耐久性は向上しているんじゃないの?」って疑いがかけられて、税務調査時に必要以上に厳しく見られる可能性があるということです。
例えば建物の外壁に防水ペンキを塗った場合なんかを考えると、「単なる修繕・修理でしょ?」とも言えるし、「いやいや、防水加工しているから耐久性が向上したでしょ?」とも言えるわけです。このように、どっちかわからない場合、つまり価値が上がっているか、耐久性が向上しているかみたいなことが判断しにくい場合も多いと思います。
判断が難しい場合は60万円未満で修理
税務調査でしっかり主張できれば良いのですが、判断が難しい場合は修理の総額を60万円未満に抑えておくことをおすすめします。60万円未満なら一括で経費にしてもいいよという便利な取り扱いがあるからです。そのため、判断が難しい微妙な修理をする場合は、60万円未満になるように修理すればいいと思います。
修繕費にするなら2つのことに気をつけよう
今回は、壁のような資産を修理(修繕)するときは、「資本的支出」なのか「修繕費」なのかが重要だということを紹介してきました。価値が上がるような修理は基本的に資本手支出になります。そのため、減価償却費として経費計上する必要があります。
今期の経費にしたい場合は、修繕費になるようにちょっとしたことに気を付けなければいけません。1つ目は価値が上がらない修理にとどめることです。2つ目は判断が難しい微妙な修理をする場合は、60万円未満の修理にすることです。このどちらかが守れていれば修繕費として今期の経費にできます。
まあ、この資本的支出か修善費か?については、税務調査があると必ずと言っていいほどチェックされるところなので気を付けましょう。大きな修理をするときは、きちんと専門家に相談した方がいいかもしれませんね。
それではまた。