一人社長の法人で福利厚生費は認められるの?

Last updated on 2023年7月17日 By 杉田健吾

前回のレクチャーで「あなたの会社(法人)がたとえ親族だけの会社だったとしても、いやもっと言えば社長だけのたった一人の会社だったとしても、慰安旅行を福利厚生費として会社の経費にしてもよい」というお話をしました。

しかしそうはいっても、「本当にひとり社長の会社に福利厚生費は認められるの?」と不安に思われる気持ちは分かります。そこでこのレクチャーでは、僕がひとり社長の会社でも福利厚生費は認められると主張する根拠をお話します。

今回の内容は

前回までのおさらい:ひとり社長だって福利厚生費を使っていい!
福利厚生費ってどんなものがあるの?
福利厚生費にしたいのであれば、「福利厚生規程」を作成せよ!

本当にひとり社長でも福利厚生費は認められるの?
ひとり社長でも福利厚生費が認められる理由
税務調査官を説得できる材料を準備することが重要

まとめ

前回までのおさらい:ひとり社長だって福利厚生費を使っていい!

前回までのレクチャーにおいて何回かにわけて、「ひとり社長でも福利厚生費を使っていい」というお話をしました。軽くおさらいしておきましょう。

福利厚生費ってどんなものがあるの?

レクチャーの中でひとり社長が福利厚生費としてもよいものの例として、こんなものを紹介しました。

スポーツジム代

会社に備えておく常備薬

慰安旅行代

それぞれリンクを貼っていますので、詳しく知りたいという方はぜひ該当のレクチャーを覗いてみてください。

福利厚生費にしたいのであれば、「福利厚生規程」を作成せよ!

先ほど福利厚生費としてよいものの例を紹介しましたが、やみくもに何でもかんでも経費にしてよいわけではありません。福利厚生費として認めてもらうためには「『福利厚生規程』を作成して運用しましょう」と重要ポイントを紹介しました。

「福利厚生規程」とは簡単にいうと「わが社にはこのような福利厚生があります」と明文化したものです。福利厚生は会社が独自に提供しているサービスなので、会社によって内容が異なります。例えば、従業員が自由にレクリエーション施設を使用できるサービス、資格取得の受験費用やスクール費用を会社が負担するサービスなど多岐に渡ります。この多岐に渡る内容を誰にでも分かりやすく説明したものが「福利厚生規程」だと思ってくださいね。

「福利厚生規程」を作成することによって、ただの思いつきで経費にしたのではなく、会社のルールに則って経費にしたという証明になるのです。

本当にひとり社長でも福利厚生費は認められるの?

ここからが今回のレクチャーの本題です。税法の中でもとてもシビアな部分「ひとり社長の福利厚生費」についてお話します。

「本当に親族だけの法人や社長と奥さんだけの法人に、さらにはひとり社長の会社でも福利厚生費は認められるの?」と不安に思われる方はぜひ読んでくださいね。

ひとり社長でも福利厚生費が認められる理由

冒頭にも書きましたが、あなたの会社(法人)が、たとえ親族だけの会社だったとしても、いやもっと言えば社長だけのたった一人の会社だったとしても、福利厚生は認められるんです。

なぜなら、会社は会社(法人)、法律上はちゃんと法人格を与えられた立派な法人だからです。原則的には従業員が100人いるような一般的な法人と同じ扱いを受けます。従業員の数は違えど法人は法人ですから、そこに法律上の差異はありません。

もっと言うと、親族だけの法人や社長と奥さんだけの法人、さらには社長一人の法人には「福利厚生費は認めない」とされる法律の規定が現状はないんです。だから、国税側もいざ

「経費として認めない」と言おうとしたら、その否認の根拠を明確に示すのが困難です。

なので前回のレクチャーでお伝えしたように、「社長と奥さんだけの会社で慰安旅行に行ったとしても、きちんと手続きを踏めば多くの一般的な会社がやっている慰安旅行と同じように、福利厚生費として会社の経費にしてもいいんではないのか?」と判断することができます。(あくまでも僕の勝手な解釈ですが)

税務調査官を説得できる材料を準備することが重要

しかし、否認する根拠が無いからと言って、何でもかんでも自分たちの都合のいいように「これも福利厚生費、あれも福利厚生費」とやってると、国税の調査官も「そんな個人的なものは法人の福利厚生費とはいえない!」と言ってくるので要注意です。

ちなみに国税庁のホームページによると、社員旅行については「実質的に私的旅行と認められる旅行」にかかる費用は給与または交際費などとして適切に処理する、とされています。「実質的に私的旅行と認められる旅行」とは簡単にいうと、「社長、ちょっとそれは一般的な慰安旅行とは言えないでしょ」と国税側が指摘したくなるような旅行のことでしょうか。

なので、こちらが賢く頭を使って、「うちの法人ではこのように福利厚生規程を作って、この規程に則って年に○回の慰安旅行を実施しています」ときちんと言えるようにするのです。国税が「なるほど。ここまできちんと規程を作成して運用しているのであれば、これは福利厚生費でいいですね」と言いたくなるように、こちら側がちゃんと準備しておきましょう。

すなわち、調査官を納得させる材料を準備しておくことがなによりも重要です。

まとめ

今回のレクチャーでは、ひとり社長でも福利厚生費が認められる根拠を解説しました。今回のポイントは次の3つです。

・ひとり社長の会社でも法人格をもった立派な会社なのだから、福利厚生費は認められる

・現状の法律ではひとり社長の福利厚生費を認めない規程が存在しない

・国税の調査官を納得させる材料(福利厚生規程)を準備しておくことが重要

ということで、やっぱり社長はどんどん節税脳を鍛えて準備と対策しておきましょうね。